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ペンケースの思い出

Updated: Jan 8





3歳になるうちの下の子が、気が付けばとにかく好きな女の子の話しかしなくて困っている。いや、困っちゃいないけど、ちょっとおののいている。保育園から帰る車の中でもぱぽちゃん(好きな子の愛称)の話しかしない。



「きょうぱぽちゃんとけんかしたんだー。でもそのあとでなかなおりしたんだよ」

「きょうぱぽちゃんおやすみだったー。かなしかったんだよなぁ」

「きょうはぱぽちゃんのとなりでごはんをたべたんだよ。たのしかったなぁ」



とかなんとか。こちらは「ふうん」とか「そうなんだー」としか、もはや言えない。自分は保育園のころ、そんなに好きな子の話ばかりしていたんだろうか。たぶんそんなことはないと思うのだが。どちらの親に似たのか、どうも彼は将来、肉食系になりそうな気配がどことなくあり、もうちょっと大きくなったらば早いうちから性教育をした方がいいよね、という話を案外真面目に奥さんとしているところだ。




いっぽう、5歳の上の子はそんなことなくて、まぁ彼はもとから保育園の話とかを親にするのがあまり好きではないせいもあるのだけど、とにかく彼の場合はたまに好きな子の話は出てくるが、それとおんなじ割合でとても仲の良い同性の友達の話が出てくる。というか、同性の友の話の方が多いかもしれない。その辺も含めて彼の方はどちらかといえばやはりジェンダーレスというか、あんまり肉食の匂いはしない。添い寝男子、なんぞにいかにもなりそうなタイプだ。というか、この父も若いころ、添い寝男子だったから気持ちは分かる。いつかそんな話をふたりでするのもいいかもしれないな。







愛のことば、を昔もらったことがある。それはペンケースに入っていた。小学校3年か4年の頃だったと思う。その女の子はクラスで別段目立つ方ではなかったが、顔立ちはかわいくて、僕とたまたま席が隣同士になったこともあって、ふたりで話すことがよくあった。そんなに明るくもないのだけど、いったんふたりで話し出すと、まるで湯水のように言葉が溢れ出し、止まることがなかった。そうなると僕は黙って、その言葉をうなずきながらただただ聞いていた気がする。



『勝手にふるえてろ!』という映画を観たとき、松岡茉優演ずる主人公を観て、なぜか彼女のことを思い出した。年齢も世代もなにもかもぜんぜん違うのだけど、なにかのニュアンスがとても近かったのだ。溢れんばかりのものが内側にいつもあり、それの懸け橋になるのはどうやら誰でもいいというわけではないあの感じ。そしてそのときの彼女のなかの懸け橋はどうやら僕であり、あるとき、それを表すような愛のことばを僕にくれたらしかった。こっそりとペンケースに忍ばせて。



でもなんせその頃の自分、あるいはだいたいの男子というのはほとんど猿そのものというか、一日中ハナクソをほじって集めては大きさを競ったり、消しゴムのカスをクラス中集めては丸めて飾ってみたり、鉛筆の折れた芯をなぜだかコレクションしてみたり。そんな愛のことばを受け取る余裕もこころの柔さもなにもかもまだ用意されてなかった。



だから僕はその愛のことばのことを、あろうことか、その当時仲が良かった同性の友人に話してしまった。ペンケースのなかに、彼女からのこんなことばが入っていたのだと。彼は当然のように次の日、彼女を冷やかしにいった。じつは彼が彼女のことを好きだったと知るのは、もうずいぶん後のことなのだが。


彼女はもうそれっきり僕とは口も聞いてくれなくなった。隣同士なのに、目も絶対に合わせてくれなかった。もちろん僕は何度も彼女にあやまった。ごめん、自分が悪かった、そんな気はなかったんだ、とかなんとか。でももちろんいったん凍ってしまったこころはもう二度と溶けることはなかった。いまでもそのときのことを思い出すと胸が痛くなる。ひとのこころという聖域において、いちど損なってしまったものは二度と戻らないのだ、ということを僕はそのとき身をもって知ったのだった。・・・いや、知っちゃいない。なぜといえば、それからおとなになっても僕はそんな過ちを何度も犯してしまったようだから。



ペンケースと聞いたら、なぜかそんな風なことを想い出す。













東京は国立にある、知る人ぞ知る『つくし文具店』の知る人ぞ知るペンケース。そもそもつくし文具の良いところは、たかが文具されど文具らしからぬ、その想いの強さ、重さ。デザイン、利便性、使い心地、あらゆる面において試行錯誤のうえに産み出されし、国産文具。その筆頭にあげられるのがこの「つくしペンケース」です。リネンの帆布でできたボディは強く丈夫でしなやかで、使えば使うほどに柔らかくなり、自分色に染まっていく愉しさ。といって、帆布なので手洗いできる便利さも。とにかく360°張り巡らされたファスナー構造が素晴らしく使いやすく、入っているものが一覧でき、案外とたくさん入るなんとも優れた子。シンプルイズベストなデザインはオトナでも持ち歩け、ペンケース以外にも使えること必至。カラーは黒、白、青。

・つくしペンケース(黒、白、青)

・価格:

・3400円(+tax)

・115×200×10mm

※お問い合わせはfacebook(Vertigo)、Instagram(@vertigo.shin)のメッセージ、

あるいはmuvertigo13@gmail.comまで




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